ご挨拶

この度、2020年4月1日に一般社団法人CirKit-Jを設立しました。これは、新薬開発に「新しい風」を吹かせ、日本・アジアからの新薬開発を盛り上げたいという純粋な思いからです。 

現在、製薬企業による新薬開発(R&D)の成功確率が下がっており、新薬開発の足かせになっています。特にその影響を受けているのが、高額な費用と長期間を要する術後補助薬物療法の臨床開発です。「より多くのがん患者の再発を予防して治癒に導く術後補助薬物療法の臨床開発」こそ、本来最も重点的に開発されるべきスペースであるにも関わらず、企業から敬遠されています。そのような中、昨今リキッドバイオプシー・テクノロジーの目覚ましい進歩が報告され、術後血漿中がん由来DNA陽性大腸がん患者は80-100%の確率で再発することが分かってきました。「画像上再発なく術後血漿中がん由来DNA陽性のがん患者」は臨床開発の新しいスペースとして注目を浴びています。世界でいち早くこの新しいスペースでの臨床開発を推し進めることが、がん薬物療法領域での日本の優位性を確立するうえで重要と考えました。 

日本・アジアからの臨床開発を恒常的に強化・維持するにはどうしたらよいかという命題に答えるためには、開発リスクの高い臨床開発を低コストで行う仕組みの構築が必要不可欠です。今までのように製薬企業の出資のみですべての臨床開発を行うのではなく、投資法人の出資を合わせて臨床開発を行う新たな仕組みを構築する必要があります。そのため、両者の出資を合わせる特定目的会社(アルファ-A株式会社)を設立するスキームを考案し、当社団を発足させました。世界的に見ても新たな挑戦です。当社団は医師主導治験に必要な投資資金を自ら集めます。現在計画・進行中の治験が成功した暁には、投資法人へ利益を還元し、残りはアカデミア向け研究助成等を行っていく所存です。さらに、複数の治験から得られた膨大なデータを統合するデータベース事業を展開します。 

昨今、新興国が台頭してきており、グローバル化が進むなかで、日本のプレゼンスの低下が懸念されます。プレゼンスが低下すれば、ドラッグラグが再来します。そのため、「製薬企業からは最小限の資金提供でも大規模臨床開発が行える」未来を構築する必要があります。日本・アジアからの臨床開発を恒常的に強化・維持するため、いや世界一にするため、今やらなければ日本の未来はないと思っています。この国に生まれ育った患者さんにこの国に生まれてよかったと言わせる未来を創りたい、この一途な思いを実現したい。当社団は、「泥水すすって誰よりも率先垂範」する覚悟をもって、我が国の医療の発展に貢献していきたいと考えております。

代表理事・理事長 茂呂 眞